外国人解雇トラブル

外国人を雇用している企業では、以下のようなトラブルをこれまで経験した事があるかもしれません。

 

「解雇をした外国人従業員から突然訴えられてしまった」

「雇用していた外国人が在留期間を更新できなかった」

 

解雇とは使用者による労働契約の一方的解消のことですが、現在の日本の労働法制では、労働者保護の観点からの規律が数多くあり労働者を解雇するのは難しいといえます。

業務遂行能力が低い社員や勤務態度が悪い社員であっても、簡単に解雇をすることはできません。安易に解雇をしてしまうと、従業員から労働審判や労働訴訟を提起され損害賠償請求などをされてしまったり、場合によっては、SNSなどを通じて、社会的にその企業が「炎上」してしまったりすることも考えられます。

 

外国人労働者の解雇が認められるためには

 

無期雇用契約の労働者の解雇は、日本人であれ外国人であれ、合理性・相当性を欠くものは解雇権濫用として無効になります(労働契約法16条)。

有期雇用契約の中途解約(つまり解雇)には、「やむを得ない事由」が必要(同17条)であり、16条よりも更に厳格です。

このような解雇が認められる合理的・相当な理由を基礎付けうる事情とは、例えば下記のようなものです。

 

・傷病により労務を提供できず、その状態が一定期間以上継続し、復帰できる見込みがない

・会社の度重なる指導によってもなお勤務態度の不良が改まらず、会社の指示に従って労務を提供できないこと

・労働契約の目的を達成できず、他の選択肢がないこと

・重大な経歴を詐称して入社していたことが判明したこと etc…

 

なお解雇理由が合理性・相当性を有する場合であっても、少なくとも30日以上前には、労働者に解雇する旨を予告しなければならず、その予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を労働者に支払う必要がある(労働基準法20条1項)ので、その点も留意が必要です。

 

 

差別的解雇とは

 

差別的解雇とは、労働基準法第3条において「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件につき、差別的取扱をしてはならない」と定めるもので、国籍等を理由とした不当な待遇を外国人に対して行ってはならないことを定めています。すなわち外国人であることを理由とした差別的解雇は無効となります。

例えば「日本語能力が劣り、コミュニケーションが十分にできず、労働契約の目的を達成できないこと」を理由に解雇する場合、外国人が日本人と比べて、日本語能力に劣ることは一般にやむを得ないといいうることであり、その事情を使用者が理解していなかったか否かが、解雇が有効か無効かを判断する要素の1つとなりえます。

仮に、外国人労働者の側から解雇無効を訴えられた場合、その解雇を有効とするためには、採用条件で、外国人が従事する職務内容に鑑み日本語能力が十分であることを要求していたか等、幅広い事情が考慮されるでしょう。

 

在留期間の更新と解雇との関係

 

また、外国人従業員が在留期間を更新できなかった場合(不法就労の状態)は、そのまま、就労させてしまうと不法就労助長罪に問われることになります。

そのため、使用者の認識やそれまでの雇用経緯によっては、これが解雇する上で「客観的に合理的な理由」に該当しうると考えられます。

 

弁護士に依頼をすることで、解雇に客観的に合理的な解雇理由があるか、手続に正当性があるかについてアドバイスを受けることができますので、お気軽にご相談ください。

また、解雇は労働者にとって非常に重い処分であり、解雇を巡ってトラブル化することも多くあります。

トラブルを避け、スムーズな解雇を実現するためにも、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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